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キベラ火災1ヶ月後の報告~早川千晶さんより~

●1月6日・火災から1ヶ月と5日目・新生活開始●
マゴソスクールに避難されていた49世帯の皆さんは、それぞれに引越し先を見つけて新生活へと旅立って行き、マゴソに残っているのはあと1世帯のみとなりました。焼け跡に再建された長屋の同じ場所のお部屋に戻ったママの新生活を訪ねました。
このママは、マゴソのすぐ近所のおばちゃんで、家の軒下に小さな野菜のお店を出して生計を立ててきました。火事で家も家財道具も売り物の野菜もすべて焼失。マゴソに避難していましたが、焼け跡に長屋が再建されたので年末にお引越しすることができました。
以前とまったく同じ場所だから便利で安心とはいえ、部屋は一回り狭くなり、しかも、大家さんが資材を買うためのお金が足りなかったとのことで、壁の一部は真っ黒に焼けた古いトタンが使われていました。そして困ったことに、家賃が1500シリングだったところから2500シリングに値上げ。まったく困っちゃうわ~。というかんじですが、それでも、こうしてまた生活を再開できて、ありがたいね~と言っていました。
この写真は、焼け跡に新しく建った長屋の路地裏です。この野菜のおばちゃんの家はこの路地に面しています。
新生活をはじめた皆さんは、生活再建のための支援をとてもありがたく思って感謝してくれています。緊急募金を送ってくださった皆さん、本当にありがとうございました。
この長屋のとなりの二階建ての長屋に、マゴソ卒業生で現在高校生のケリアちゃんちがあったのですが、ケリアちゃんのお母さんは、すぐお隣の部屋で11ヶ月の赤ちゃんが火事に巻き込まれて亡くなったので、その同じ場所に戻るのは辛いと言って、別の場所に引っ越していきました。
この野菜のおばちゃんの場合は、やはり長年つちかってきた顧客との関係があるので、同じ場所に戻るほうが生活としては安心、ということで、その利点を重視して同じ長屋に戻りました。みんなそれぞれの想いでの新生活開始です。
こうして時間と共に、皆さんの生活がだんだんと落ち着いていくといいなと願っています。
 

●非常口と石の塀●
火災から1ヶ月。年末年始もずっと休みなく、キベラスラムのみんなは働き続けてくれて、マゴソスクールは新しく生まれ変わりました。かなり工事が進んできてリリアンのアイディアの全貌が見えてきたとき、リリアンの賢さにあらためて驚かされました。学校中のあちこちに非常口を取り付け、風通しを良くするための大きな窓をいくつも付け、学校の敷地内には死角ができないように見晴らしを遮るものは移動させ、奥まった位置にあった男子寮は危険だと場所を移動させました。
リリアンによると、火災のあと、何日も火がくすぶり続け、夜は恐怖で眠れなかったそうです。スラムの路地は細い迷路状で、住居が密集しています。もしもあの火災が夜中に起きていたとしたら、マゴソスクールでも多くの子どもたちが逃げることができずに命を落としていただろうと考えると、いつまた火が広がるかと恐怖が続いたそうです。
万が一、またそんなことが起きたときには、いろんな逃げ場があるように、非常口をあちこちに取り付けること。奥まった部屋に子どもたちを寝させないこと。火が回ることを防ぎ、暴徒が乱入することを防ぐための防壁を強化。考えに考え抜いたリリアンの設計なのだということがわかりました。この新しくできた壁に、画家のミヤザキケンスケさんが1月中旬から絵を描きに来てくださいます。この写真でリリアンが指差している壁は、マゴソの障がい児特別学級の前にある、体が不自由な子どもたちのための遊び場になる場所です。みんなが安心して過ごせるステキな場所にしていきたいと思います。

●リリアン現場監督、まだまだ続く●
焼けてしまったマゴソ図書館とコンピューター室の壁は、石のブロックで防災壁を新しく2階の屋根まで作りました。これでかなり安心感が違います。この校舎は火事でボロボロになってしまったので、床や屋根も全面的な修復をしています。狭苦しいスラムの中で、大きくて広い部屋というのは本当に貴重だから、開放感のある、みんなが大勢集えるような、大きくて風通しもよくて明るい部屋を作ったらどうかなということになり、仕切りはもうつけずに一気にこのふたつの部屋をひとつの大きなホールに広げることにしました。どんなふうに新しく生まれ変わるか、皆さん楽しみにしていてください。