夫ジャクソンは恐らく現在40歳くらい。
都市部ではこのくらいの年代で字が読めない、書けない人はほとんどいない。
マサイは・・・、特にうちの地域のマサイは、となると、ジャクソンの世代では
半数近くが学校に行かなかったので、文字がわからない。
このような話をお客さんにすると、ある人がこう言った。
「ジャクソンさんはそれを、学歴が無いことが、コンプレックスでは無いんです
か?」と。
もっとずっと年配の方だが、その方の知り合いの日本のある男性は学歴が低いこ
とを常にコンプレックスに感じていて、他人が自分を笑っ ているのではない
か・・という妄想も常に持っていたから・・・、とのこと。
あ〜、確かに文字がわからないというのは、
ナイロビのような大都会だとジャクソンも苦労する場面が多いだろう。
だが、村の暮らし、マサイ的な暮らしでは文字が書けても実力発揮する場面は少
ない。
そんなことより、薬草の知恵や野生動物のこと、牧畜に関すること、コミュニ
ティーとの関わり方、など生きていくために必要なことは山 ほどある。
そっちが出来ないとマサイの伝統社会では、生きていけない。
かと言って、都会へ行って高い学問をおさめたが故に、牧畜に関するレベルが多
少低いからと言って、別に小バカにされるという感じでも ない。
彼らは非常にクールに、人それぞれの役割の違いを心得ている。
人それぞれに与えられた役割を淡々とこなせば良いのだ。
字が読めなくても他に秀でたものがあるはずだし、身体的に優れなくても頭脳を
活かせるかも知れないし、皆それぞれ違うわけで・・・、 てな感じ。
鼻息荒く、拳をあげてそれを訴えているわけではなく、非常に当たり前にクール
に身に付いている。
ジャクソンにこのことを話すと、
「そうなんだよ〜っ!人間はね・・・」な〜んて、熱く語るわけでもなく、そん
な当たり前のことをいちいち分析している私に対して、い つものように
「ふっ」と乾いた笑いが返って来るだけであった・・・。