「私の名前はノンゴクワ」

2005年4月の結婚式の夜、新しい嫁にふさわしい名前を長老たちが決める。
今日から新しい人生が始まるのだから嫁としての新しい名前が必要なのだ。
私が頂いた名前は「ノンゴクワ」。意味は”大きな雲と激しい雨の季節”だそうだ。
この時期西の空に「ンゴクワ」と呼ばれる星がある。
このンゴクワが地平線に沈もうとする頃地鳴りとともに大きな雲が沸き起こり激しい雨が降る。(マサイ説)
この季節をノンゴクワと言うのである。ちなみにこの「ンゴクワ」という星は日本では「スバル」と呼ばれているらしい。

結婚式の前夜から降り続いた雨は当日になっても降り続けた。ちょうどこの4月はケニアは大雨季。人々が待ちに待った季節。アフリカの人々にとって雨は祝福を意味する。
そんな雨と共に嫁に来た私に、長老たちは素敵な名前をくれたのだ。

私が外国人だからマサイの名前をもらったのではない。
女性は皆結婚式の夜に新しい名前をもらう。
マサイは皆人生で4つの名前を持つ。
まずは生まれて間もなくの幼名、割礼前の10-12才頃もらう少年・少女期の名前、
そして男性は戦士時代、女性は結婚してからの名前、
最後は自分の子供が割礼を受ける頃の超長老としての名前である。
マサイは年齢世代の線引きがきっちりしており、次の世代に移行するたびに大切な儀式を行う。
そしてその世代にふさわしい名前を授かり、世代に見合った役割を自覚しながら生きる。
そのためにも名前が変わるのである。
ちなみに夫の幼名はヤント、少年期はコデディア、今は戦士時代の名前オレ・ナレイヨである。
今から10年後くらいには長老としての名前をもらうのだろう。