通常マサイの結婚式は前日の夜、新郎とその家族が新婦の家へお嫁さんをもらいに行くことから始まります。
新婦の家では新婦側の宴が繰り広げられます。
その夜に、新婦の親は新郎とその家族に娘を渡すに当たっていろんなお願いごとをします。
私の実家は日本だしナイロビの家も遠いので、村から一番近いロッジを実家に見立てて行いました。
日本、ナイロビから友人もたくさん来てくれました。新婦側の宴会なので、マサイの家族の皆さんもこの日は日本式な披露宴に付き合ってもらいました。彼らに とっては、初めての乾杯やケーキカット、更には日本人ご一行様の歌や踊りにも大爆笑で楽しんでくれていたようです。
翌日の結婚式当日、通常は新婦の家族、参列者は新郎の村には行かず 見送るだけな のですが、今回はせっかく日本から友人たちも来てくれているので、本番の伝統儀式を見ないわけにはいきません。例外的に参列させてもらうことになりまし た。マサイは新婦側の宴は新婦側で、新郎側は新郎側で、と分かれています。
新郎の村へ向かう道中は新婦は喜びよりも家族と別れた悲しみの顔で歩くのがしきたりです。新婦は笑わない、喋らない、後ろを振り返ってはいけないのです。この、喋らないというのは私にとってかなり苦しいことでした。
村に着いたら村の入り口でも、家の入り口でも入ることを躊躇わなければならないしきたりです。そうするとマサイのママが「牛をあげるから入りなさい」と言います。そうやってもったいぶって自分を高く評価してもらうのが決まりなのです。
新郎にはほとんど儀式はなく、私一人の儀式が続きました。
家の中では最後にひょうたんの牛乳を飲みます。一人三々九度のような感じです。これで、正式に妻になることを認めたことになります。
外ではすでに飲んだり食べたりが始まっていました。マサイにとっての神聖な牛を1匹解体して焼いて食べます。
夜には長老会議が開かれて、私の新しい名前「ノンゴクワ」が決まりました。
翌日の朝の儀式が最後。夫からもらった4頭の牛に牛糞を塗りつけて印をつけるのです。マサイにとって牛は一番大切な財産。今日から私も牛持ちです。気持ちが引き締まる瞬間でした。